【抄録】
接着歯科治療は、「より保存的な介入で、より長期的な予後を求める」という困難に直面してきた。その技法にはダイレクト(直接法)とインダイレクト(間接法)があり,両者には利点だけでなく、問題となる部分も有している。例えばダイレクトでは支台歯汚染がなく、接着には最適な歯面環境だが、技術的難易度や重合収縮が引き起こす接着界面への問題がある。一方、インダイレクトでは審美的に良好な補綴装置が出来上がるが、接着処理の煩雑さに加えて装着時までの被着歯面への汚染が問題となる。それぞれ一長一短な性質を有している両技法だが、臨床におけるその境界は曖昧なまま治療が行われているのではなかろうか。
そこで今回は一つのケースに対して、ダイレクトとインダイレクトのどちらを選択するかという問題提起をしたい。それぞれ臨床において見落としがちな部分にもフォーカスをし、それらをどう克服しているか文献に裏付けされたプレゼンテーションを行う。その後、接着歯学の第一人者である峯先生にご解説して頂きたいと考える。