大塚 英里


《略歴》
ナディアパークデンタルクリニック 歯科衛生士長

日本歯周病学会認定衛生士



「歯科用内視鏡(ペリオスコピーシステム)を用いた低侵襲で確実な歯周治療」

【抄録】

現代医療において、低侵襲という概念は明確な方向性として認識されており、実際に医科では、内視鏡を用いた低侵襲な検査や外科手術が多く行われている。内視鏡を用いた手技のメリットは、術部に内視鏡を挿入し、その画像をディスプレイで見ながら、最小限の侵襲で検査や手術を行うことが可能である。そして、このような内視鏡を用いた手技が歯科にも導入され、歯周治療に応用されるようになった。
歯科用内視鏡「ペリオスコピーシステム」は、直径約1mmの内視鏡を歯周ポケット内に挿入し、歯肉縁下の歯根表面や歯石等の沈着物を、20〜40倍に拡大して視ることができるシステムで、ディスプレイで歯周ポケット内の画像を確認しながらデブライドメントを行うことが可能である。これまでは、歯周ポケット内に存在する歯石や沈着物を、手指の感覚とエックス線写真のイメージを頼りに非明視下で除去してきた。この場合、複雑な歯根形態をしている部位や、セメント質肥大やエナメル滴などがみられる部位には、的確に器具を到達させることが困難であり、オーバーインストゥルメンテーションによって歯根面を損傷させてしまうこともあった。また、複雑な歯根形態をしている部位や深い歯周ポケットが存在する部位には、細部まで歯石を除去しきることが困難なため、フラップを開けて直視下でデブライドメントを行わなければならない事もあった。しかし、ペリオスコピーシステムを使用することにより、フラップを開けずに充分なデブライドメントを行うことが可能になるケースが増え、患者への負担を軽減することが可能になった。本ランチョンセミナーでは、ペリオスコピーシステムを用いた根面デブライドメンドによりどこまで歯周組織の改善がみられるのか、症例を通してみていきたい。
また、ペリオスコピーは歯科衛生士教育にも役立つと考える。歯科衛生士が一番苦手とする歯石の触知を歯石の取り残しがある部位で指導者がペリオスコピーで画像を視せながら行うことで、触知感覚を得られる効果的な指導ができる。
このように、ペリオスコピーシステムは、技術力が高い歯科衛生士の育成にも貢献してくれると期待している。